J論プレミアム

【六川亨の視点】2021年12月4日J1リーグ第38節 FC東京vsアビスパ福岡

J1リーグ第38節 FC東京0(0-0)0アビスパ福岡
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数14,364人
試合データリンクはこちら

 

試合後、ホーム最終戦のセレモニーで東慶吾はファン・サポーターに次のように言った。

「リーグタイトルという強い気持ちで戦い続けました。正直悔しいし、残念な気持ちでいっぱいです。間違いなくここ数年でチームのベースは上がりました。このベースを来年以降につなげないといけない。長谷川監督には本当に感謝しています」

キャプテンが振り返ったように、長谷川監督はFC東京に「ファストブレイク」というカウンターでリーグ優勝まであと1歩に迫り、昨シーズンは3度目のルヴァン杯というタイトルをもたらした。しかし、その主役である永井謙佑はベンチスタートで、ディエゴ・オリベイラとレアンドロはベンチにも入っていなかった。これでは攻撃に迫力がなくても仕方がない。

そんな福岡との試合で収穫をあげるとすれば、ケガ人続出で悩まされた今シーズンではあるが、終盤になってオールラウンダーの内田宅哉、SB鈴木準弥、MF紺野和也がピッチに戻り、順天堂大学に在学中のMF寺山翼がJリーグのデビューを飾ったことだろう。長谷川監督の辞任により残り3試合の指揮を執った森下申一監督も「長谷川監督との4年間は今日終わりました」とファン・サポーターに別れを告げた。

さらに付け加えるなら、福岡MF田邉草民が途中出場ではあるが3年ぶりに味の素スタジアムのピッチに立ち、試合後はゴール裏のサポーターに拍手で迎えられ、挨拶できた。

対する福岡は、レジェンドであるFW城後寿が「なんとしても8位で終えよう」と語ったように、勝点1に対するこだわりがあった。過去のJ1リーグで最高成績は2000年の12位。今シーズンは10位以内でのJ1残留を目標に掲げ、8位で迎えたFC東京戦。相手は9位で、直接対決に敗れると順位が入れ替わる。このため長谷部茂利監督も8位にこだわり、選手も最低でも勝点1を獲得することに全力を尽くした。

アウェーにもかかわらず、試合後はゴール裏のサポーターをバックに記念写真を撮った福岡。いつものように歩いてスタジアムを一周したFC東京。第三者からすれば“消化試合”にすぎないかもしれないが、両チームの選手による“思い”がこの試合をちょっぴりだが熱くしてくれた。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ