J論プレミアム

【六川亨の視点】2021年9月29日 J1リーグ第28節 川崎フロンターレvsヴィッセル神戸

J1リーグ第28節 川崎フロンターレ 3(0ー1)1 ヴィッセル神戸
19:03キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数4,932人
試合データリンクはこちら

 

やはり王者・川崎Fは強かった。神戸はアンドレス・イニエスタのミドルパスから大迫勇也、武藤嘉紀とつないで先制したものの、川崎Fは直前の湘南戦(2-1)と鹿島戦(2-1)で2試合連続して逆転勝利を収めているだけに、焦りを感じさせなかった。ただこれは川崎Fを過大評価していたようで、鬼木達監督は「前半は受けてしまった」と反省の弁を口にした。そして圧巻だったのが後半立ち上がりの猛攻だ。

2分にマルシーニョのドリブル突破から最後は脇坂泰斗のシュートは左に外れたが、7分には神戸のパスミスからショートカウンターを仕掛けて家長昭博が至近距離からシュート。これはGK飯倉大樹がCKに逃れたものの、川崎Fは手を緩めることなく波状攻撃で神戸DF陣に圧力をかけた。すると8分、マルシーニョのドリブル突破にCB菊池流帆がたまらず背後から押し倒してしまう。マルシーニョにしてみれば「思うつぼ」だったかもしれない。それだけ菊池はパニックに陥っていたのだろう。

このPKは家長が左ポストに当ててしまうが、続けざまの10分、旗手怜央の右クロスがボランチに起用された大崎玲央のハンドを誘発し、これをレアンドロ・ダミアンが確実に決めて同点に追いついた。後半開始から立て続けに4回の決定機を演出しての同点弾である。

そして決勝点は神戸CBのオウンゴールだったが、高速クロスを入れた山根視来はGK飯倉のサイドへ展開するパスを読み切ったインターセプトから生まれたものだった。

立ち上がりからGK飯倉を起点にビルドアップを図った神戸だが、2CBにプレスを掛けられると、前半は右SBの酒井高徳が高い位置に開いてGK飯倉からのパスを受けようとした。しかしこれは川崎Fに読まれ、たびたび登里享平にカットされた。酒井の動きをサポートする神戸の選手よりも川崎Fの選手による包囲網の方が早かったからだ。そして決勝点の場面では、GK飯倉がパスの出しどころがなくなったので、左SB初瀬亮がワイドに開いてパスを受けようとした。結果は、山根が「待ってました」とばかりにインターセプトして、旗手とのパス交換から右サイドを突破してOGを誘った。

これで川崎Fはラウンド16で敗退したACLの蔚山現代戦(9月14日)から帰国後、9月18日の徳島戦から22日の鹿島戦、26日の湘南戦、そして29日の神戸戦と中3日で3試合、中2日で1試合の4試合を消化したが、4連勝で勝点を78まで伸ばした。残りは7試合(昨シーズンより4試合増)だが、昨シーズンの最終勝点83を上回る驚異のハイペースと言える。

鬼木監督は神戸戦について「中2日できつかったが、しっかり逆転勝利してくれた選手を称えたい」と言いつつ、「まだもう1戦あるので切らずに突き進みたい」とも話した。「もう1戦」とは、中2日の10月2日に対戦するFC東京を意味する。今シーズンは3度の5連勝を達成しているが、6連勝は一度もない。“多摩川クラシコ”で連勝記録を伸ばすのか。それともFC東京が一矢報いることができるのか。熱い試合になることは間違いないだろう。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ