J論プレミアム

【六川亨の視点】2021年8月14日 J2リーグ第25節 大宮アルディージャvsブラウブリッツ秋田

J2リーグ第25節 大宮アルディージャ1(1-0)1ブラウブリッツ秋田
19:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数3,333人
試合データリンクはこちら

 

東京オリンピック後に再開されたJ2リーグで、秋田は松本に1-4と大敗した。中断前も山口に0-1で敗れていたため連敗スタートである。対する大宮は、再開初戦のアウェー新潟戦はアディショナルタイム+4分に勝ち越しゴールを奪われたが、1分後にパワープレーから同点弾を叩き込み2-2の引き分けに持ち込んだ。中断前の琉球戦(2-2)、長崎戦(1-1)に続き、3試合連続して追いついてのドローである。勢いは大宮にあると判断した。

実際、開始早々の秋田の決定機を横浜FCから移籍したベテランGK南雄太がブロックすると、3分には徳島から完全移籍したFW河田篤秀が移籍2試合目で大宮初ゴールを決めて先制する。しかし後半40分、秋田はセットプレーのこぼれ球をDF飯尾竜太朗が押し込んでドローに持ち込んだ。

試合後の吉田謙監督は、いつものように朴訥な口調から「チーム一体で、全員がつながって、ボールを奪う、ゴールを守り抜く。今日見てくれた人に、秋田を伝えていこうとプレーしてくれた。誇れる勝点1です」と連敗を止めた選手に胸を張った。一方の霜田正浩監督は「総括は一言。2点目が取れず、予想していたセットプレー、彼らのストロングポイントであるセットプレーでガマンができず失点した」と悔しさを滲ませた。

2人の監督が指摘した通りの試合だった。秋田は連敗阻止に必死だったし、大宮も勝点3を取るために全力を尽くした。秋田は初のJ2リーグで自信を深めつつあり、大宮は霜田監督になって自信を取り戻しつつある。後半51分には秋田のファウルと思われたプレーが、秋田のスローインという判定になり、両チームの選手がエキサイト。大宮ベンチ前に両チームの選手が入り乱れるところ、吉田監督は選手をなだめるために大宮ベンチの前まで駆け寄るシーンもあった。

両チームとも優勝の可能性はほぼない。むしろ大宮はいまだ降格ゾーンにいる。それでも試合は濃密な90分間だった。大宮は霜田監督の目指すポゼッション・サッカーを追求し、秋田は鍛えられたフィジカルから空中戦の強さを発揮してセカンドボールを支配した。指揮官がブレない姿勢を貫く両チームは、順位に関係なく今後も手に汗握るスリリングな試合を展開することだろう。見に行って損はない両チームと断言したい。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ