J論プレミアム

八戸で世界初のサッカー応援方法を体験する(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

 

八戸で世界初のサッカー応援方法を体験する(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]四十八段目

 

■2020年、思い出に残った旅

正月4日のルヴァン杯決勝が終わってJリーグの2020年シーズン、全1103試合が無事終了した。東日本大震災の2011年をしのぐ変則開催(何しろ元日の天皇杯決勝の後に、ルヴァン杯決勝が開催されている!)であり、かついくつかのクラブからコロナ感染者が出てしまったわりには見事やり切ったんじゃないだろうか。正直、僕は現場でクラスターが続出するなどして、シーズン断念に追い込まれるんじゃないかと気が気じゃなかった。これはガイドラインを策定したJリーグ、実施したクラブ、応援ルールを遵守したサポーターの勝利だと思う。つまり、サッカーファミリーの勝利だと思う。みんながサッカーを大切に守り抜いた結果だ。

僕個人も(特に感染の拡大局面では)取材旅行を自重せざるを得ないことが多くて、難しいシーズンだった。アルビレックス新潟をメインに書いているが、僕は東京在住なのでホーム戦が「県またぎ」になるのだ。それでも数をしぼって大一番には足を運ぶようにした。ただ取材旅行が例年と比べて面白くない。移動して、試合を見て、ビジホで1人コンビニ弁当食べて寝る繰り返しだ。土地の旨いものを飲み食いするのは早々あきらめた。サポの知人と反省会もしない。とにかく感染リスクの最小化だった。それでもそこそこ耐性が高かったのは僕が元々、お酒を一滴も飲めない下戸だったからだと思う。

そんな苦しいシーズンにも思い出に残る旅はあったんだという話がしたい。

今回は終わったばかりの2020シーズン(もちろんJリーグ史にも、世界史や日本史にも残るだろう)を振り返り、いちばん感激した旅を語ろう。それは12月初旬に行った八戸遠征だ。僕はアイスホッケーチーム、日光アイスバックスの「中の人」をやってる関係で、チームに帯同して青森県八戸市を訪れた。

八戸はスポーツの盛んな土地で、高校野球の八戸学院光星高校(巨人・坂本勇人の母校)が有名だけど、最近はアイスリンクのインフラ整備に力を入れていて、スピードスケート、アイスホッケーの強化を推し進めている。その核になっているのが東北フリーブレイズ、今回、日光アイスバックスが対戦したクラブチームだ。八戸と郡山のダブルフランチャイズを敷いていて、母体はスポーツ用品販売大手のゼビオスポーツ。ご承知の通り、この冬、東京ヴェルディ新体制移行(子会社化)で何かと話題となったあのゼビオだ。ちなみにヴェルディ新社長の中村考昭氏は東北フリーブレイズの社長を務めていた方だが、そこのところの経緯はスポーツ紙などで全く報じられていない。

そしてもうひとつ忘れちゃいけないこと!、2019年から本州最北のJリーグチーム、ヴァンラーレ八戸が存在する。街にJクラブが誕生したことは素晴らしいニュースだった。もちろん東北フリーブレイズとヴァンラーレ八戸は同じホームタウンを持つチームとして協力し合う関係だ。12月6日もプライフーズスタジアム→フラット八戸の「ハシゴ観戦」直行バスが用意されていて、僕としては、おお、これはヴァンラーレ見に行くしかないじゃん、という流れだった。

 

 

■世界初!カスタネット応援とは

というわけで本州最北のJリーグ、ヴァンラーレ八戸・ホーム最終戦(しかも、異例の12月開催!)にありついたのだ。気温は意外と高くて9℃、天候は曇りのち小雨。八戸市役所の前からバスに乗って、工業団地の方へずんずん進むとプライフーズスタジアム(八戸多賀多目的運動場)が待っていた。2016年完成のまだ新しいスタジアム(J3規格)。こけら落としとなった同年10月のJFLセカンドステージ第11節、MIOびわこ滋賀戦で5028人を集めている。

この日の一戦はJ3第31節の相模原戦だった。相模原はJ2昇格をめぐってデッドヒートの真っ最中であり、すんごい気合入ってる。迎え撃つヴァンラーレも本拠地最終戦だ。サポにいいところを見せたい。それから引退する須藤貴郁、河津良一の花道を飾りたい。偶然見に行くことになったが、大注目試合じゃないか。

現地に着いて、13時キックオフまで時間があったから売店を見てまわることにした。キッチンカーで名物のせんべい汁をいただいたり、赤い羽根募金ブースでヴァンラーレ八戸のクリアファイルをもらったり。何かねぇ、空が広くて気持ちがいいんですよ。広場をあっちへふらふらこっちへふらふらしながら、あぁ、いいところへ来たなぁとしみじみした。で、グッズ売店にも立ち寄ったわけですよ。

そうしたらすごいアイテムを発見した。「世界初!あたらしい応援のカタチ / カスタネットを鳴らそう」とでっかく書いてある。

 

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