食野亮太郎、2年目の決意……シティに戻ってプレーしなければ意味がない【サッカーときどき、ごはん】
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電撃のマンチェスター・シティへの移籍発表から勝負の2年目を迎えている食野亮太郎。スコットランドを経て、今季はポルトガル1部リーグでプレーする。現状を「下積み」と表現する彼の視線の先には何が見えているのか。胸に秘めた思いを聞いた。
■ガンバに何も残せてないという思いは正直あった
僕がマンチェスター・シティにオファーをもらったのは、「興味を持ってる」と言われてからすごい早かったんですよ。ガンバ大阪にいた2019年5月11日、アウェイのサガン鳥栖戦でJ1初ゴールを決めたんです。3人ぐらい相手が来たんですけど、体が勝手に動いて、ホント、イメージどおりのゴールでしたね。
最初は「興味持ってる」って話が来て。そう聞かされたときは、そこまで実感が湧かない感じだったんです。でもそこから正式オファーをもらうまでは早かったですね。ヨーロッパは一瞬のひらめきじゃないですけど、この選手だと思ったらすぐオファーするイメージですね。正式オファーだって聞かされたときはビックリすると同時に、やっぱりうれしかったですね。
そこからはちょっと悩んだ……というか考えたことがありましたけど、やっぱり挑戦したいという気持ちはあったし、シティからオファーが来て断るという選択肢はなかったですし。
「ガンバで結果を残してからヨーロッパに行きたい」という気持ちはありましたけど、そこは自分のチャレンジしたい気持ちを優先させてもらいました。ただ、迷ったというか、ガンバに対してまだ何もできてないという思いは正直ありました。でもこのチャンスは逃したくないという思いのほうが最後は強かったんで、行かせてくださいという話をさせてもらいましたね。
オファーをもらった時点でシティの人からは「どこか他のチームにレンタルするつもり」ということを言われてました。「レンタルすることになるけど、海外でのキャリアを手助けしたい」と言ってもらえて。
「そこで成功してシティに帰ってきてほしい。その可能性を見越してオファーしてる」って言ってもらえて。それを1つのモチベーションにしてますし、ヨーロッパでキャリアを積んでいくという意味では、これ以上ない環境というか、コネクションやと思ってますね。
海外でやりたいと思い始めたのは……そんな具体的に思ってたわけじゃないんですよ。いつかは行きたいと思ってたんですけど。ガンバのアカデミーでプレーしてるときから、「ガンバのアカデミーは海外で活躍できる選手を育成する」っていうようなことをずっと言われてて。そういった意味でも海外に行って自分の価値とかガンバの価値を広めていきたいという気持ちも持ってました。
もともとはスペインリーグが好きだったんです。バルセロナとかレアル・マドリーが大好きで、中学生ぐらいからリーガ・エスパニョーラをWOWOWで毎試合見てました。ずっとリオネル・メッシが好きでしたね。右利きなんでメッシとは違うんですけど、「めしの」「メッシ」っていうのが覚えてもらいやすいんで呼ばれたりしてました。あとはエデン・アザールとかもチェルシーに入ったときぐらいからずっと見てましたし、好きですね。
日本人の名前って、ヨーロッパの人には発音が難しいらしくて、自分の名前を呼んでもらうのにも苦労してるんです。だからできるだけ簡単な呼び名で呼んでもらえるようにしてて。
ヨーロッパでは「メシ」って呼ばれてます。「りょうたろう」ってのはこっちじゃ結構難しいらしくて、「メシ」のほうが簡単だからって。最初は「リオ」って呼ばれてたんですよ。でもそれが何かイヤで(笑)。なんですかね、あんまりしっくりこなかったんで。どっちでもいいんですけど、「メシ」のほうがよかったから。
■肘打ちも当たり前…タフな環境で磨いた武器
それで去年はスコットランドのハーツにレンタル移籍したんですけど、スコットランドリーグはめっちゃパワフルなリーグでしたね。毎試合タフなゲームやったし。とりあえずみんな体が強いんですよ。
真正面から挑んだら絶対フィジカルでは勝てないし、だいぶ当たりがキツいんで。体に触られる前にマークを外しておかないと、ピッタリくっついた状態でボールを受けるともうホンマに足ごと払われるし、肘打ちも当たり前やったんで、そこは工夫するようになりました。
でも自分のクイックネスが逆に生きて、いいリーグやったと思います。前向きでボールを受けたときは自分のほうがクイックネスが上やから絶対に有利でしたね。相手は付いてこられないから。
相手が強いからって今から特別に筋トレしたところであまり意味ないかなって。これから筋肉つけようとすると体のキレを落としちゃうかもしれないし、筋肉量が上がるまでに2年とか3年とかかかるだろうし。
だったら自分が今、持ってるもので勝負しなきゃいけないと思って。体では負けてても、最初の1歩や2歩のところは僕のほうが早かったし、マーク外すとか、一瞬のキレで勝負するとか、そういうところに勝機を見いだせる部分があったので、それを消す必要はないと思って。
最低限の筋トレとか体幹トレーニングとかはしましたよ。それで成長できてるっていう実感はありました。去年1年スコットランドでプレーしてムダやったとは思ってないし、むしろいい経験をさせてもらえたし。ブリティッシュ・フットボールって言うんですかね、それを味わえたのも良かったです。
ただ今年に入ったら新型コロナウイルスが広がり始めて。ヨーロッパに行ってだんだん慣れてきてたときにコロナが流行ったんですけど、まぁそれは仕方ないですよね。
スコットランドはそんなにめちゃくちゃ感染者が増えてなかったんですけど、イギリスというくくりではロンドンがすごかったんで、スコットランドも同じ対策を取ってたという感じでした。
新型コロナウイルスの影響が出てからは生活も変わって。スーパーに行っても入れる人が限られてて、今、ポルトガルでもそうなんですけど、小さなスーパーやったら10数人しか入れないんで、列作って並んで待ってますね、みんな。
スコットランドでもう1年チャンスがありそうならやってみたいとも思ってたんです。同じリーグで複数年プレーしたいという希望も持ってたんで。そうしたらポルトガルのリオ・アヴェが2年契約を提示してくれたんです。スコットランドリーグが終わったぐらいで、結構早くからリオ・アヴェに声をかけてもらって、あとはスムーズに話が進んだんですよ。
スコットランドリーグが終わってから、1回日本に帰りましたけど、リオ・アヴェに行くことが決まってからまたヨーロッパに来たんです。あんまりニュースは見なかったんですけど、感染防止の対策だったらポルトガルが一番しっかりしてるかもしれないです。
ポルトガルはみんなマスクして、対策という意識は結構高いところやと思いますね。イギリスの人はあんまりマスクとか着けなかったんですよ。でもこっちの人はしっかり距離を保つし、マスクしてるし、消毒液は至る所に置いてあるし、対策という面ではちゃんとしてると思います。
ただ僕がいる街はあんまり人口が多くなくて、感染者もあまり出てないみたいなんですけど、ポルトとかリスボンでは多いみたいです。チームのメディカルスタッフから聞いてるニュースではリーグが中止になる前ぐらいにまた増えてきたというのが現状らしいです。リスボンあたりで増えてきたということを聞きました。
■年齢は関係ない…海外で感じた文化の違い
ポルトガルデビューになったポルトガルリーグ初戦のトンデラ戦では86分から出場して、アディショナルタイムにゴールを決めることができました。フィジカルの強い相手にどう対処するかという点では、スコットランドで身につけたことが2年目のこのポルトガルで生かされてる気がします。
確かに開幕戦でゴール取れたのはいいことなんですけど、自分としては取れない時期があっても試合に出続けて、また点を取れる時期が来たりとか、そこからチームも上向きになってとか、得点以外の部分でも貢献する、そういう選手になりたいんですよ。
去年もレンジャーズ戦で点を取ったりしましたけど、シーズン通じてコンスタントに試合に出て結果を出すというのが理想なんですよね。それが自分の中で一番必要なことだと思ってて。だからまだまだ満足できないです。
それでも開幕戦の後のヨーロッパリーグではプレー時間が延びましたし、そのあとのリーグ戦ではスタメンでしたし、そういうのの繰り返しなんかなって思うんで。こっちは結果を残せば試合に出られる感じなんで。
Jリーグでも1シーズン通して出続けたわけじゃないんで比較はなかなかできないんですけど。でもいい意味で、年齢関係ないというのはみんな言いますね。ハーツのときに、今ボローニャに行ったDFのアーロン・ヒッキーがいましたけど、ああいう17、18歳でも普通に30代の選手に文句言ったりしてました。ああいうのはいいと思いますね。
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