大分トリニータ気鋭の「頭脳」が語るJ1再開と展望。「1つのゲームプランで戦うのは難しくなるかもしれない」
戦術的ピリオダイゼーションを礎とし、日本サッカー界きっての理論派の指導者で片野坂監督からも絶大な信頼を寄せられる大分トリニータの安田好隆コーチ。一流の分析眼、戦術眼をもつ若き参謀はコロナ禍でのサッカーの変化をどのように予想しているのか? また実際に現場でトレーニングなどを指導して感じていることとは? J1再開を前に特別にインタビューに応じていただいた。
(取材・構成/ひぐらしひなつ)
■リモートマッチはやってみなくてはわからない
――Jリーグ再開となり、チームも緊張感が高まっているのでは。
そうですね。今週末、J1に先駆けてJ2、J3のゲームがあるので、無観客で開催するリモートマッチがどういうものになるのかを見て、選手たちも僕らも、より実感が湧くのではないかと思います。誰も経験したことのない状況ですから、難しいですね。
――リモートマッチに向けて、コーチングスタッフとしてはどういう準備が必要になりそうですか。
スタッフよりも選手たちのほうが影響を受けそうだと予想しています。観客も公式戦を形づくる要素のひとつ。その大切な要素が完全にない状態でゲームをすることになる。多くのスタッフ・選手が、初めての経験です。ファンやサポーターの方々の応援によって出るプラスアルファの部分がどうなるのか。本当にやってみなくてはわからないです。僕、個人的にも生で見たこともやったこともないので。
――目の前で起きたことに対して柔軟に対応していくという感じでしょうか。
そうですね。クラブ内外の色々な方々の協力のおかげで出来るかぎりのシミュレーションは、やらせてもらっています。
■再開初戦に向けて感じている難しさとは?
――シーズンが中断したこと、また感染の不安などによる選手たちの影響は。
特に身体の部分の影響は目に見えやすいですね。誰も経験したことのない状況なので、選手と話し合いながら進めています。
――しかもこの暑い時期からのスタート。トレーニングでの選手たちの疲労回復力についてはどのように見えますか。
選手によってばらつきがあるように見えますね。
――海外のリーグでは再開初戦に失点が多く、大味なゲームになることが多かったです。どのように御覧になりましたか。
こういった状況での「ゴール奪う・守るエリアでかかる身体的な負荷の高さ」と「100%のパフォーマンスを90分間維持すること」の難しさを感じています。
■連戦続きのなかでのトレーニングの工夫とは?
――例年、開幕戦は情報戦になります。今季は2度目の開幕戦状態ですが。
やれることをやり、集めることの出来る情報を集めるということを、スタッフ全員で進めています。
――ほとんどのチームが練習を非公開で行なっている中で、情報も集めづらい状況になっているのですか。
そうですね。
――さらに今季は連戦続きでスカウティングが難しそうです。どういったところが戦いのポイントになりそうですか。
トレーニングする時間が限られてくるので、少ない時間で最大のメリットを提供できるようなトレーニングが必要になってくると思います。
――最大のメリットを効率的に出すためにはどうすればいいのでしょうか。
トレーニング時間が短いということはインプットする量が限られるということなので、その中で「相手の情報」と「こちらの狙い」のズレを実際の試合となるべく少なくするのが、僕らの仕事です。
――これだけ情報が少ない中では想定外の事態も多くなりそうですね。
想定外のものに選手たちが流れの中で対応・調整できるようにトレーニングをしなくてはならないということだと思います。「試合に向けての準備」としてのトレーニングの意味が、本当に大事になってきます。
――大分のサッカーはベースがある上に対相手戦術で色付けしていくイメージですが、その色付けの部分が今季は特に難しいということですよね。
通常であれば、4回の練習で準備出来るものが、2回、少なければ1回になる状況が増える。その中で戦うことになります。
――連戦になるとライフキネティックやオールアウトを組み込んだ1週間のトレーニングサイクルが実行できませんが、その影響は出てきそうですか。
選手の反応を見ながら、その都度のベストをコーチングスタッフで話し合いながら進めていくだけだと思っています。
――安田コーチの専門の戦術的ピリオダイゼーションには、これだけの連戦に際しての考え方もあるのですか。
連戦に際しての考え方ももちろんあります。ただ、それよりも大切なのは、目の前の状況に合わせてコーチングスタッフでアイデアを出し合って決めていくことだと思います。
■交代枠5人への変更で予想される大きな変化とは?
――今季のJ1からはJ2降格制度がなくなりました。影響はありそうですか。
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