渾身の栃木記事,ワタナカの今→『今週の清水英斗おすすめ3本』(9/24~)
『タグマ!サッカーパック』ユーザーに向けて、サッカーパック対象コンテンツをご案内するコーナーが復活。9月はサッカーライター「清水英斗」さんが毎週「これは!」と思った記事をおすすめとして紹介いきます。
※コンテンツ対象期間:9月16日~9月22日
■この厳しい現状を変えるために。【9/20練習レポート】(栃木フットボールマガジン)
残留を争う鹿児島ユナイテッドとの6ポインターを制した栃木。その背景にあるドラマが伝わる、渾身の記事だった。
廣瀬浩二のコメントも芯を突いている。自分は自分、人は人。みんな違って、みんないい。そんな個人主義の時代において、各人の主張やこだわりが許容されるようになったのは確かだろう。昔とは考え方が違う。5分前に練習グラウンドに出てくることも、逆に“合理的だ”と感じる人もいるかもしれない。
だが。もし、それでうまくいかないのなら、自分を見直さなければならない。結果が出ていないにもかかわらず、自分のやり方を守ることにこだわり続ける。それはプロの姿勢ではない。時には過去の自分を否定することも必要。大いなる勇気、覚悟とともに。
いい記事だった。
また、文中では田坂和昭監督がサポーターから投げ掛けられた、“ある言葉”も紹介されている。その言葉を重く受け止めた監督が、ミーティングでも選手に伝え、最終的に大一番の勝利を呼び込んだ。
栃木を動かした、サポーターの一言。それはサポーターの立場で叫ぶからこそ、心に響く言葉になったのだろう。
まさに、残留戦線の今。いい記事だった。
■都並敏史、11年ぶりの監督復帰。その先に見据えるJへの旅路(J論プレミアム)
『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中公新書ラクレ)という本を書いた折、都並さんには、監督の仕事の内面についてコメントを寄せてもらったことがある。
選手やサポーターから、クラブで働く掃除のおばちゃんまで、みんなの生活を背負って働くという監督の重責を、都並さんはリアルに語ってくれた。その経験、辛さがわかっているので、解説者として監督のことを話す際も、「腹の底からリスペクトしている」と付け加えていたことも印象的だ。
都並さんの監督復帰には驚いたが、この記事を読む限り、GMやディレクターの役割を一部含めて、就任の意図があるようだ。知名度を生かした同様のやり方は、JFLや地域リーグではよく聞く話でもある。
様々なクラブが東京からJリーグを目指す中、果たしてヴェルディとブリオベッカは、バルセロナとエスパニョールの関係になれるのか。この飽和していく現代、何か強いカラーが無ければ、なかなか難しいんじゃないか、という気はする。
でも、がんばってほしい。その太陽のような笑顔と、エネルギーで。
■カンボジア初のJリーガー、代表選考漏れを語る。チャン・ワタナカ「不満はないよ。これがサッカーだからね」(フットボールカンボジア)
前回のワールドカップ予選で話題になったワタナカ選手のことは、もちろん覚えている。2016年にカンボジア初のJリーガーとして、藤枝MYFCにレンタル移籍したことも。
ただ、その後は知らなかった。怪我に苦しみ、今年は本田GMが指揮するカンボジア代表からも落選。今は喪失感と戦いながら、日々を過ごしているようだ。
ワタナカ選手のコメント自体は、淡々と語られているが、著者との様子、間、空気感が描写されており、その行間にある歯を軋ませるような思いが、記事からは伝わってきた。
「今はこの左足を治すことに集中して、モチベーションを維持している」
この言葉の重みを、感じていただきたい。
清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。