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「改革が遅れればJリーグは魅力を失う」。選手の大量移動でカオスだった今夏のJリーグ移籍市場の深層をベテラン代理人が明かす


(Photo by Tomoko Hatano)

 

国内外で選手の大量移動が起きた今夏のJリーグ移籍市場。シーズン中にこれだけ選手が動けば、チーム編成への影響は大きく、死活問題となりかねない。果たして、それを防ぐ手立てはあるのだろうか?
なぜ夏の大量移動は起きたのか? 今後もこの傾向は続くのか?
業界の話は業界の第一人者に聞こう、ということで代理人・田邊伸明氏に今夏の移籍事情を解説してもらった。(取材・構成/森雅史)

 

■今夏の選手の大量移動はなぜ起きたのか?

9月の台風が本格化するシーズンを前に、Jリーグの移籍市場には強い風が吹いている。昨年起きた夏の選手の大量移動に比べても、今年のJリーグ夏の移籍市場では選手が大きな渦に巻き込まれた。そしてこの風は今後ますます強まろうとしている。

2018年の夏は、アンドレス・イニエスタ、フェルナンド・トーレスなど大物外国人選手の加入が話題となり、加えて多くの選手が新たなクラブを目指した。J’s GOALがまとめた「移籍情報 2018 夏」(2018年10月27日更新)ではJ1リーグだけでも、新加入選手が50人、クラブを出た選手が65人、海外クラブに移籍した選手は12人、このうち日本人選手の海外移籍は5人と、ずらりと名前がならんでいる。

その選手の流動性は、今年さらに高まった。移籍ウインドーが閉じた8月16日までの「移籍情報 2019 夏」(2019年8月16日更新)には、去年よりも長いリストが掲載されている。J1リーグは新加入選手が60人、クラブを出た選手は94人、さらに海外に移籍した日本人選手は2018年の倍以上となる12人になった。

今年の夏の移籍期間には何が起きていたのか。そしてなぜこのような事態になっているのか。ベテラン代理人として、これまで数多くの選手の国内外への移籍を手がけてきた田邊伸明氏(@jebetanabe)に、今年の特徴を語ってもらった。

「今年の夏の移籍がものすごく活発に見えたのは、一つは動きが遅かったからです」。田邊氏は実は動き出しが鈍かったのだと言う。

 

■「今後も若い選手がJリーグを抜けていく移籍は続く」

「これまでは、夏前に話が出来上がっていたりしました。シーズン前の段階で他のクラブの移籍しそうな選手に目を付けて、実際にシーズンが始まると『やはりこの選手が出場していない』と狙いを定め、『移籍するのはどうですか?』と声をかけていたのです。ですが今年はその声を掛けるスタートが遅かった。しかもJ1のクラブが遅かったから、J2のクラブも最後までバタバタしていました。そのためまとまって多くの選手が移動することになり、より派手に見えました」

田邊氏は「移籍ウインドーが閉じる直前に移籍が相次ぐのはヨーロッパに似てきた」と語る。Jクラブも期限直前まで他の動向を見ながら駆け引きを続けるようになってきたということだろう。

また実際に移籍した選手の数も増えた。その要因を田邊氏は「国内のクラブ間での移籍」「海外への移籍」「選手の立場から見た移籍」という3つの観点で解説した。

 

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