ピエトロさんが見ている(海江田哲朗)
『タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。
近所のスーパーで手当たり次第にピエトロを買ってきた。ほかにも何種類かある模様。
ピエトロさんが見ている(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]九段目
福岡の人間は、お国自慢が大好きと言われる。
とんこつラーメン、もつ鍋、明太子といった食の名物はもちろんのこと、久留米が話題に出れば「スターの産地ですよ。松田聖子にチェッカーズ!」とすかさず言う(えのきどさんも一時期は久留米ですね)。四半世紀も前のことだろうが一切気にしない。さらに話が展開し、井上陽水や長渕剛をはじめ数々のミュージシャンを輩出した伝説のライブハウス『照和』を差し込むチャンスがないかうずうずしている。最後の締めに「多くのフォロワーを生み出したビートルズ現象との類似性から、誰が呼んだか日本のリバプール」と付け加えられれば、その夜はぐっすり眠れる。
そのほか、女の子のしゃべる博多弁がかわいい。天神にいけば、だいたいなんでもある。街のサイズ感がちょうどよく暮らしやすい。などなど、極めて主観的な見方に過ぎないのだが、福岡よいとこアピールに余念がない。
自分の手柄でもないのに、やけに威張って語るところがある。ご多分に漏れず、小中高と福岡で過ごした僕もそう。嫌がらせのように何度も同じ話をされる妻からはいい加減にしてほしいと言われるが、聞く耳を持たない。いざそのときになると言わずにはいられない。病気みたいなものだ。
18歳で福岡を出てからもうすぐ30年。すっかり東京暮らしのほうが長くなったのになぜだろう、病状は悪化の一途をたどっている。
一方、アビスパ福岡に対しては、やや屈折した思いがある。第一、自分が地元を離れて以降にできたクラブだから、身近な存在として感じた時期を持たない。それでも故郷のチームには変わりなく、応援している友だちもいる。よい成果を挙げればよかったねと思う。そのくらいの距離感だ。ただし、アビスパがお国自慢に入ってくることは、まず、ない。
5月11日のJ2第13節、東京ヴェルディはアビスパと対戦し、3‐2で勝利。これにより、東京Vは11位にランクアップし、アビスパは20位に順位を落とした。
ユニフォームの背中裾、『ピエトロ』のロゴマークがだらんと下がって見える。これを目の当たりにし、沸々と沸き上がるものがあった。こげなシーズン、ピエトロさんはどう思うやろうね、と。
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