令和時代に望まれるスタジアムのあり方とは?クラブライセンス事務局の「中の人」に訊く(後編)
■「スタジアムを作ります」と宣言すればOK?
──今回の「スタジアム基準の改定」の中で、個人的にポイントだと思ったのが「猶予期間の考え方」です。これは成績面で昇格の条件をクリアして、その時点でライセンス基準を満たすスタジアムがなくても、具体的な計画があれば例外規定として認められるというものです。この考え方が生まれた背景を教えてください。
大城 これは先ほども申し上げた「競技の公平性」をなるべく確保したというところですね。たとえば20年シーズンのライセンスの審査は2019年度に行うわけですが、20年シーズンが始まる前にライセンスの基準を満たすスタジアムやトレーニング施設があることが、これまでの原則的な条件でした。今回の改定では「何年後かにできるのであれば『すでにある』という判断でもいい」ということですね。
──この猶予期間については「陸上競技場の改修」と「フットボールスタジアムの新設」によって条件が異なるのがポイントですね。陸上競技場の改修については、(1)観客席増加の改修工事が3年以内に完了すること、(2)工事期間中も試合開催に支障をきたさないと理事会が認めること、(3)競技に影響する照明や諸室の改修は翌年の開幕までに整備が完了すること、とあります。
大城 (1)はまさに町田のケースですね。すでにバックスタンドの改修が始まっているので、今年の審査でも「基準を満たす」と判断される可能性は高いと思います。
──では、町田が今季2位以内でフィニッシュすれば、J1に昇格できる?
大城 町田はトレーニング施設でもJ2基準なので、そこは「J1に上がったら3年以内にトレーニング施設を作ります」と確約していただく必要があります。現時点ではまだ、そうしたメッセージが届いていないのですが。
──なるほど。次にフットボールスタジアムの新設に関してですが、(1)競技に影響する照明や諸室の改修は翌年の開幕までに整備が完了すること、(2)「理想のスタジアム」の4要件を満たすスタジアムが5年以内に新設されること、とあります。その4要件とは「アクセス」「屋根」「ホスピタリティ設備」「フットボールスタジアム」。つまり「理想のスタジアムを作ります!」と宣言すればOKということでしょうか?
大城 まあ、そういうことなんですが(苦笑)、これが条件緩和かというと微妙なところでして。つまりアクセスが優れていて、すべてのスタンドが屋根に覆われていて、ホスピタリティ設備も充実したフットボールスタジアムを作ります、ということですからね。
──それって、鹿島アントラーズがオリジナル10に入る条件(1万5000人収容の屋根付きフットボールスタジアム)よりも厳しいですよね(苦笑)。この「理想のスタジアム」を作るということであれば、5年の猶予が与えられると。
大城 そうなんですが、陸上競技の改修の例外規定《観客席増加の改修工事が3年以内に完了すること》との併用も可能なので、進捗が遅れていても、プラス3年の猶予期間があるんですね。ただ、これが「8年」と一人歩きするとよろしくないので、あまり大きく打ち出していません。
──スタジアムの建設って、それこそ自治体をはじめ多くのステークホルダーが絡む話ですから、5年とか8年とか長いスパンで考える必要がありますよね。一方で、5年後や8年後に行政のトップが変わっている可能性は十分あり得るし、国内の経済状態がどうなっているかもわからない。そうして考えると「8年の猶予がある」と手放しで喜ぶのは、ちょっと違うのかもしれないですね。
大城 私もそう思います。このルールをもう少し細かく説明しますと、5年の猶予タイマーは昇格しない限り動かないんですね。たとえば現在J2のクラブが、J1ライセンスを申請する際に「スタジアムを作ります」と宣言すればOKという形にはなるんですけど、昇格しなければ5年の猶予期間はそのまま持ち越されます。逆にJ1に昇格した場合は「現状のスタジアムでJ1を戦うのは、8年以内にしてくださいね」ということですね。
──この改定が去年の町田に適応されていたら、どうなっていたでしょうか?
大城 去年の町田は4位でしたので、そのままJ1参入プレーオフに出場したでしょうね。スタジアムの改修のために3年間の猶予が認められたと思います。
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