美しくも儚い「湘南ペンタゴン」の謎。J1屈指の“防衛力”を誇る守備はなぜ諸刃の剣なのか?
緻密で美しい湘南ベルマーレの守備。ただ、ペンタゴン(五角形)の機能美とは裏腹に失点が少なくないのはなぜなのか? J最大級のミステリーを追う。
J1で得点数4位、失点数4位が示唆するのは?
湘南ベルマーレは第16節時点で16位。勝ち点は17位柏レイソル、18位横浜FCと同じですから、今季は1チームのみの降格とはいえ予断を許さない状況にあります。
第16節はホームにアルビレックス新潟を迎えて2-2の引き分けでした。2分にPKから町野修斗が先制しますが、30分には伊藤涼太郎のパスから谷口海斗に決められ1-1、さらに62分にも谷口にCKからゴールを許します。しかし、終盤に攻勢をかけて84分に小野瀬康介が決めてドローに持ち込みました。
ここまで湘南は23得点していてリーグ4番目。湘南より多いのは北海道コンサドーレ札幌(37点)、横浜F・マリノス(33点)、ヴィッセル神戸(32点)。札幌が最多得点というのはいかにもですが、神戸、横浜FM、そして湘南と並んでいる名古屋グランパスは現在のトップ3。今季の湘南はかなりの得点力といえるでしょう。
一方で、失点は27とこちらも多いほうから4番目。31失点の札幌の次に多く、得点失点ともに多いという点では札幌と似ています。ただ、攻守ともに湘南と札幌に似たところはそれほどなく、たんに数字だけが似ているという感じもしますが。
得点も多いけど失点も多いわけですが、湘南のプレーぶりからするとやや意外ではあります。ただ、新潟戦でも2得点2失点。今回はこの試合から、なぜそうなっているのかを考えてみます。
J1でも独特で統制のとれた五角形(ペンタゴン)の守備
新潟戦、立ち上がりは湘南のペースでした。テンポのいいパスがスムーズに回ります。2分には相手のハンドボールでPKを獲得、町野が決めて早々にリードしました。
その後もとくに守勢になることもなく、新潟に主導権を渡しません。ところが30分前あたりから新潟に攻め込まれるようになります。30分には伊藤から谷口へ見事なラストパスが通って1-1。ここまではそれほどやられそうな気配がなかったので唐突な失点という印象がありました。
湘南の基本フォーメーションは3-5-2です。中盤中央がアンカー+2人のインサイドハーフという、最近ではあまり見かけなくなった形を採っています。
守備のときは2トップとインサイドハーフ、アンカーの5人が五角形を形成。その後ろを5バックが守る。この守り方も独特というか、フォーメーションが珍しいので守備ブロックもあまり見ない形になっています。(図1)
湘南の五角形の内部に侵入するのは難しいので、相手はサイドへボールを展開しますが、そうすると五角形がその形を維持したまま後退。全体がコンパクトなまま少しずつ下がる形になっていて、かなり統制のとれた守備です。(図2)
パスワークでは今季J1でもトップクラスの新潟が、なかなかボールを前進させられませんでした。30分までを見る限り、湘南が4番目に失点の多いチームとは思えませんでした。
整備された守備と強度。なのになぜ失点数が多いのか?
整然とした守備と球際の速さ強さを見る限り、とても失点が多いチームとは思えません。しかし、
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