西部謙司 フットボール・ラボ

Jリーグにレアル・マドリーは生まれるか?「自分たちのサッカー」30年目の終焉

30周年で盛り上がりを見せるJリーグ。優勝争いが混沌とするなか、抜け出すのはどこのチームなのか? また今後覇権を握りそうなチームは? キーワードは「オールマイティ化」だ。

欧州トップでオールマイティ化が進む 

Jリーグ30周年ということで盛り上がった第13節。国立競技場では鹿島アントラーズが「らしい」感じで名古屋グランパスを下し、湘南ベルマーレ対北海道コンサドーレ札幌も「らしい」打ち合いから4-2と札幌が勝利。横浜FCに敗れた柏レイソルはついに「ネルシーニョ監督解任へ」という報道も。

ヴィッセル神戸はサンフレッチェ広島を2-0で下して首位キープ。一方、神戸を追う横浜F・マリノスはアルビレックス新潟に敗れ、依然2位とはいえ神戸との勝ち点差は5と開きました。今回は折り返し地点に向かう中、優勝争いはどうなるのか戦術的な観点から考えてみたいと思います。

バルセロナもマンチェスター・シティも「自分たちのサッカー」だけでは勝てなくなった

スペインではバルセロナのラ・リーガ優勝が決まりました。まだ4試合ありますが、2位レアル・マドリーと14ポイント差なのでひっくり返りません。凄いのは34試合でたった13失点しかしていないこと。13試合のJ1でも13失点以下は5チームしかありませんからね。驚異的な少なさです。

バルサはボール保持力が強いので、そもそも守備機会が少ないということはあるのですが、それだけでは説明がつきません。GKテア・シュテーゲンの好守も含めて守備が固くなっています。レアル・マドリーとの試合ではガッツリ引いたケースもあり、保持とハイプレスの2局面ゴリ押しではなくなってきています。

レアル・マドリーはもともと4局面どれも強いオールマイティ型です。近年のCLでやたら強い理由ですね。そして堅守速攻の代表格だったアトレティコ・マドリーもかなり攻撃力が強化されました。狭いエリアでのパスワークはバルサ、レアルをしのぐほどです。アントワーヌ・グリーズマンが水を得た魚となっております。

CLを見ても、マンチェスター・シティがバスを置くような守備をするなど、勝ち上がったチームは状況に応じて戦い方を変化させています。シティ、バイエルン・ミュンヘン、レアル、パリ・サンジェルマンなどトップクラス同士の対戦になると、「自分たちのサッカー」で押し切るのは無理になってきているんですね。基本的には保持+ハイプレスではありますが、状況によっては堅守速攻型にもなれないと厳しいわけです。レアルはいち早くオールマイティな戦い方をしていて、それが近年の強さの理由の1つだったわけですが、もはやレアルだけではないと。

で、J1ですが、遅かれ早かれ欧州のトレンドが影響してくるのはこれまでの歴史を鑑みても容易に想像できるわけです。

有望なのは横浜FM、神戸、浦和だが…… 

オールマイティという点で、今のところ最もバランスがいいのは横浜FMだと思います。

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