西部謙司 フットボール・ラボ

英雄の帰還と好ゲーム。膠着してもセレッソ大阪vsアルビレックス新潟が面白かった理由

セレッソ大阪2-2アルビレックス新潟。膠着した展開になりながらも白熱した面白いゲームを繰り広げた両チーム。英雄が帰還したセレッソ、昇格組ながら洗練したサッカーを披露した新潟。見どころの多かった一戦を深く読み解く。

香川真司、背番号8の系譜 

C大阪では8番がエースナンバー。現社長の森島寛晃氏が現役時代につけていた背番号です。小柄で機敏でテクニカル、創造性溢れるアタッカーを生み出す広島の出身で、金田喜稔、木村和司の系譜を継ぐ名手です。

森島の8番は香川真司、清武弘嗣、柿谷曜一朗に受け継がれました。そして今、C大阪には香川、清武が所属しています。3人とも欧州クラブでプレーした後に戻っていますが、最初に旅立った香川が最後に戻ってきて8番をつけているのは感慨深いものがあります。それにしても全盛期の香川、清武、柿谷に乾貴士を加えた4人が一緒にプレーし続けていたらどうなっていたのか。C大阪、Jリーグの歴史も変わっていたかもしれないですね。

開幕戦、香川はレオセアラに代わって70分に登場。2点目の起点になりました。左サイドでスローインを受けて相手DFの裏へ正確なフィード、山中亮輔を走らせる。山中のクロスボールのこぼれ球を奥埜博亮が決めました。香川の左足のコントロールと左足のパスはシンプルではありますが、その精度にクオリティの片鱗がみえました。

その後も浮き球の巧みなコントロール、ターンしながらのワンタッチパスと香川らしいプレーがありました。ただ、かつての牛若丸もかくやのクイックネスはもうないようでした。負傷の影響かもしれませんが、33歳という年齢からして二十代の速さが衰えていても不思議ではないでしょう。機敏さは香川の最大のストロングポイントだったので、もしそれを失ったとしたらもう以前と同じ香川ではない。けれども技術は衰えません。その技巧と経験値を生かして少し違うプレースタイルになることはありうる。欧州組の中でもワールドクラスに最も近づいた選手がJリーグに戻ってどんなプレーをするのか興味深いです。

セレッソが手にしたジョルディ・クルークスという武器と次期「8番」候補。ビルドアップが「柔らかい」新潟が誇る≪日本の10番タイプ≫。それでも個人的なMOMは…… 

C大阪は4-4-2、新潟は4-2-3-1。どちらもボールを保持とハイプレスの組み合わせ。似た者同士の対戦でしたが、ビルドアップに関しては新潟のほうがスムーズに見えました。J2のときからこのスタイルの新潟は、ビルドアップが「柔らかい」。

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